
雲がバレエを踊っているから
僕らもつられて踊りを踊った。
背筋を伸ばして、あごを少し引いて
両足は肩幅に、両手の拳を軽く握りしめると
音楽が始まる。
最初は、曲を身体に馴染ませるように
ゆっくりと・・。
次第に速くなるリズム。
僕らのステップも大地をしっかりと踏みしめたい。
空気の層を切り刻むように、激しく動かす両手。
回転する自分の正面をしっかり捉えて
見失わないように・・。
やがて音楽はスピーカーからではなく
自分の内部から鳴り響き始めると
それを合図に、僕ら自身の思いを互いに形にして
表現しあう。
飛び散る汗に絡めて、弾む息を蹴散らして
フロントに、サイドに、バックに体勢を入れ替え
心の赴くままに。
いつしか迎えた高みの頂点で僕らは歓声を上げた。
そしてクールダウン・・。
窓を開けると、真昼の月が少し傾き始めていた。
こんな風にして、いつでも僕らの生活は唐突だ。
シャワーを浴びて、思いついてうなぎを食べに出かけた。
備長炭でパリッと焼いて、タレは薄め。
箸を入れたときのサクッという感触が楽しみだ。
うなぎを食べてから、踊りを踊ればよかったのに・・。
それは正論かも知れない。
だけど、雲のバレエはあの瞬間にだけみえたんだ。
だからあのステップはもう二度と踊れない。
でも、僕たちはきっと、次のきっかけを待って
また新しい踊りを踊るんだ。
新しい音楽に合わせて・・・。


